ウラヘドロン SPECIAL 「太田裕美 スタッフ」番外編 3/3
聞き手:
でも太田裕美さんの場合って、うちの会社の中でやっぱりすごく愛されてる匂いって、売れてればみんなが近づきもするんでしょう
けど。
丸山:
うんだから、あれはすごく難しいんだけど、売れてくるとマネージャーさんていうのは、どちらかと言うとスケジュールやなんかの
あれがあるから、なるべくレコード会社と切り離して自分のものにしたがる。それでもうレコード会社から入ってくるスケジュールは
なるべく無しにして、もっと儲かる仕事をやるって方向に行くんだけど、この人全然それ、考えないわけじゃないだろうけど、それ
よりも相変わらず引き続きレコード会社と気分よくやるってことを重視したっていうところだよね。たぶん渡辺プロにずっといても
出世しねえよな。
藤岡:
しないね。
丸山:
会社の儲けになんねえんだもの(笑)。
聞き手:
辞められた理由っていうのは、渡辺プロをその後。
藤岡:
いやあれはね、あれはまた丸さんとまたひとつドラマがあんだけどさ、最大のきっかけはシャネルズっていうグループをルイードで
やってる頃、このまま渡辺プロいてもしょうがないかなあというのと、でも出るのも怖いなあというのと、じゃあシャネルズを渡辺
プロいた方が楽かなあとか色々考えてるところでちょうどEPICレコードができて何年ぐらいやったっけ、2,3年?
丸山:
一年半。
藤岡:
一年半か。ぐらいの時で他の人の意見も聞いたりなんかして、で、思い切ってやってみるかっていうなことで、あんまり俺もずっと
独身だったからね、あんまり考えないで済んだよね。会社辞めることも。だから割と流れ通りに、流れのままに来ちゃってんじゃ
ないかな。あまり流れに逆らったことないもん俺。
聞き手:
う〜ん。
丸山:
今の大崎さんの顔、カメラで追っかけたかったね(笑)。何とも言えない顔してた(笑)。
聞き手:
いや、流れのまんま生きられるって、これほど素晴らしいことはないと思ってるんですけど。
藤岡:
いやだって、そこに知恵がないからさ、しょうがないよね。
丸山:
異様に白川が黙ってるね。
白川:
いやいやいや、聞いてるのよ。なるほど、みたいな。
藤岡:
さっきの営業との話になるけどさ、レコードの会社の営業の奴とがっちり手を組んでれば、最低このぐらいはなんとかなるっていう
のが、あれはあったねえ、ずうっとあった。裕美の、俺がやってた間ではずっとあった。だから黒ビルができて本社ビル行った時
でもさ、必ず営業所、まず最初に営業所来たって、営業に来たって言って。宣伝に来た?、いや今から営業所に行くんだ、宣伝が
頭だからとか、そんなこと言いながら顔出してたね。あれ今日来ないねっていう状態にしたかったからね。あの頃は裕美も連れて
いかなかったから。前は裕美も全部連れていってたからね。所長の前の席で座らしてお茶飲んでたから。だから営業に行く前、
朝礼が終わって営業にみんな、営業員が散る前に、今日もよろしくっていうパターンをやってたからね。
丸山:
よくわかんないんだよねえ。当時中野寛さんが人事にいたんだ。
白川:
あっそうなんですか。
丸山:
で、さあ、マネージャーはいくらなんでも人事までは知らないっていって、人事にまで顔売ってんだからね。だからねそれがね。
計算なのかね、ただ好きなのかね、未だにわかんないのよ。
藤岡:
計算じゃないね、計算できないから。
丸山:
それで人事にアイスクリーム持ってったりして、人事の女の子に受けたりしてるわけだよね。
藤岡:
情報が入ってきたりしたもん、人事異動の(笑)。本人より先知ってたりしてさ。
丸山:
そういうことやってんのよ。
聞き手:
でもよく総務のところにペタッと座られてたりとか...
丸山:
あっEPICね、そうだったよね。あれはワンフロアだったから、わかりやすいんだけど、そうじゃなくて黒ビルの、もう乱暴にいうと
上から下まで順番に。だから局やなんかに行くの面倒くさいから社内ぐるぐる...
藤岡:
局はあそこまでやんなくてもできるじゃない。だいたい局の中で2人おさえとけばさ、番組入るんだから。
聞き手:
でも藤岡さんがすごく面白いなと思って、昔から思ってたことっていうのがあって、意図されてるのかどうかって私も全然わから
なかったんですけど、なんか人と人との接着剤だったり、吸着剤だったりっていう...
藤岡:
それは全然意図してないよ。
聞き手:
でも動きのポイントがみんなそこへスッスッと行ってるような印象っていうのがすごく強かったんですけど。
藤岡:
意図はしてなかったね全然。本能のままじゃないですかね。
聞き手:
藤岡さんがすごく人好き?
藤岡:
うん、人好きではあるね。
聞き手:
アーティスト、スタッフ。
藤岡:
ただ、嫌いな奴もいるんだけどね、でも少ないよね。
聞き手:
すごく個人的なことにどんどん入っちゃうんですけど、嫌いってどのの部分がピッと反応するんですか?
藤岡:
いや、何かわかんない。あっ、こいつ合わねえなっていうね。でもあの頃は、さっきの営業の話だけどポイント持ってる奴はもう
好きだろうが嫌いだろうがやっぱり酒飲んでたね、一緒に。だいたい終わる時間も、あいつら外から帰ってくる時間もだいたい
わかるじゃん。そうすると5時か6時ぐらいにさ、営業所に行ってさ、一本釣りしてきてね、星光堂担当とか、そんなことしてたね。
聞き手:
その当時の藤岡さんから見た白川さんの印象って?
藤岡:
いや、こいつはねえ、何てんだろう。クリエイティブ能力というか物をまとめる、創り上げていく、それは俺はあの頃はすっかり
信頼してたよ、うん。
丸山:
もうこの辺にたくさん、画面に映ってないこっち側に元白川の部下がいるからあれだろうけどさ、まあねえ白川に説教されまくった
よなあ、二人で。午前3時に集まって、あんた何した、俺何したみたいなんで、そんなんでいいわけ?みたいなさあ。もう延々
説教されたもん。
白川:
そんなことないよ(笑)。
丸山:
いやほんとだって。俺が藤岡のこと説教したことなんて1回だけだもん、覚えてんの。
藤岡:
自分の作品ね、ここまで自分の作品作ったのが何でこんななのよ、ってやられ方だから、しゃべられ方が。
丸山:
そう。
聞き手:
怖い?
丸山:
怖いよお、でもさあ、言ってることは一応もっともじゃん。正しいこと言ってるわけ。
白川:
そんなことない。
丸山:
しょうがないからさ、酒飲みながらしょうがねえなと思って聞いてるわけよ。そうすると説教っていうのはカラオケと同じだからね、
言えば言うだけ盛り上がるじゃない、もうガンガン盛り上がるの。4時ぐらいになると絶好調だよね。毎日だもん、3年。
聞き手:
話のトーン変わってきましたね(笑)。
白川:
迷惑してたんでしょうね(笑)。
丸山:
いや、毎日いたんだから、そりゃそれで面白かったんじゃない。正しいこという奴だなあと思って。
聞き手:
藤岡さんの丸山さんの印象は?
藤岡:
丸やんはね、とりあえずこの中で、この中をまとめてくれる人が丸さんって感じだったのよ。このプロジェクトを。
丸山:
本来はこの人なのよ。
藤岡:
こういうふうに見てるのね。こっちはすごくその何か作りあげていく次の、次はどういうものを持ってこようかとかさ、次はどう
いう色にしようかとかね、太田裕美を。そういうことを常に考えてるおっさんで、このプロジェクトをまとめてくれてて、俺は
だから、その設計図通りに動きゃいいって状態だった。プロモーション計画通りに。
丸山:
完全に設計図は書いてたからね。設計図の説明がさ、微に細にわたるのよ。
白川:
それは飲んでるからだよ。
丸山:
だから飲んでなければ、もっとちょっと噛んだかもしれないけども、それで次の作品の詞はどういうコンセプトにいくかとかいう話
やなんかをするわけじゃない。もう勝手にしてくれっていうところあるんだけど、まあ聞いてるよね。それで足りなくて、家に電話
かかってきたりするじゃない。俺は電話長くないのよ、未だに携帯ほとんど使わないのと同じように、電話あまり好きじゃないから。
3時間電話で、あーだこーだ。終わったらさ、カチンカチンになってる。受話器戻せないっちゅうのは初めてだもんね。びっくりした。
聞き手:
その時の会話って覚えてます?
白川:
もう覚えてない。だってさ...
丸山:
「赤いハイヒール」の時だもん。
白川:
被害を受けた方は覚えてんだけど(笑)、被害を及ぼした方は意外と覚えてないもん。でもね、とにかく一緒にいて毎晩しゃべってた
ことは事実。毎晩だもん。
丸山:
よくテーマがあると思うよ。
白川:
毎晩飲んでんだから。
丸山:
何しろ毎回テーマがあるのよ。ああでもない、こうでもない。
白川:
だって土日休みじゃない、日曜日だけ休みじゃない。月土ずっと飲んでるわけだから。それで仕事の話を真面目にしてたよね。
丸山:
仕事以外の話しないもん。
白川:
与太話全然しない。酒飲んで毎晩しゃべってた。
藤岡:
あの頃はさ、セイヤングとオールナイトニッポンとパックインミュージックか、その3つに毎日ちゃんと顔出して、太田裕美って
名前を言ったり、俺が行けば太田裕美がここにいるような状況を作ってあったから、必ず顔出して、今日あんなのが入ってやがって
とかさ、色んなことを帰ってきて言ってたよ、ここで。終わってから会うんだから。だから3時過ぎだよね。
聞き手:
丸山さん、その頃さらにアーティスト担当が30...
丸山:
まあ、あったよね。あの頃乱暴だからさ、結局予算ゼロ、宣伝費ゼロとかさ。それから20万、それから100万、それからあと
申請次第とか、大雑把に分かれてたの。もうちょっと細かかったかな。太田裕美100万だもんね。
聞き手:
当時の100万だと物価とか色々スライドしても200...
藤岡:
たいして変わんないよ。
丸山:
変わんないよ。だから作れるのはポスターと、チラシの1種類とそれから小物。小物は今も覚えてるけどマッチなんだね。それで
型を決めたのよ。グランドピアノを上から見た形のマッチ。
藤岡:
あっ、それだけだもん。ほんと宣伝費なんか何もなかったよね。
丸山:
リリースごとにそのマッチが頭が黒で、2番目が「たんぽぽ」だから黄色で、3番目が夕日だから赤にして、「木綿のハンカチーフ」
でチェックにしたんだよね、黒白の。これはほとんど予算かかんないよね。それとチラシとポスターで、それで終わりだもん。それ
以上くんないんだもん。
聞き手:
宣伝は人力?
丸山:
人力人力人力。
藤岡:
メディアの方はそうだし、さっきみたいに営業所各地にある時は別枠で受注トップのところには、ウソばっかりついてるハワイ旅行
プレゼントとかさ、もう色んなこと言ったからさ(笑)。
丸山:
そうだ今思い出したけどさ、何の時かなあ、短編集、12ページ、アルバムを初めて専門誌、新譜ジャーナルか何かに紙出稿する
ってのになって、今でもねえ、東急インターだね今の、迷惑だと思うけどあの頃チーフの今井さんっていう人と日曜日に東急インター
にそのページの広告のコンセプトを決めるっていうんで、もう5時間ぐらいやりあげたの。考えてみたらそんなもんね、専門誌に
1ページを2誌ぐらいに打つっていうんで、そんなもんやったって何のあれもないよな。難しこと言いあげて、向こうも困ったと
思うよね。
白川:
ね。
丸山:
たった2誌。その打つっていうのが初めてもらった100万円以外の宣伝費じゃない。盛り上がっちゃって俺なんか。
聞き手:
でも当時、興奮した気持ちを推測すると、どうやってもパブリシティとして入れなかった音楽誌ですよね。
丸山:
そういう気分だったんかなあ。たぶんそうかもしれない。
聞き手:
で、部数はそんなに大きくないはずだし、もはやアルバムが例えばきっちり売れが見えていれば、そんなに重要な項目ではない
はずだけれども、だたどうしてもそこのところに出るか出ないかっていうことで、このあとの太田裕美の見え方っていうのが...
丸山:
だからさ、もうあらゆるコンセプト説明してたった1ページの活版だよ。モノクロだよ。それもグラビアじゃないんだよ。そこに
やるってんで盛り上がって、東急の会議室おさえさせて、そこんとこに向こうのコピーライターなんか全員詰め込んで、ガー言い
あげて。どうにもなんないよね、そんなに言われたってね、たった1ページしかねえんだもん(笑)。盛り上がったなあ、あん時
には。何かねえ、それだけで世の中うんと変わるような気がしてたの。
聞き手:
でもあの頃、まだメディアの複合ってのがまだそんなになくて、どっかのメディアが1個おさえられると、そこについた人間たちが
おさえられるていう...
丸山:
まあねえ。
聞き手:
まだそういう時代は時代。
丸山:
あれ一体効果あったのかないのか、わかんないけど、でもね、何て言うんだろう、今考えてみると気の毒したと思うよね(笑)。
聞き手:
でもそれ言うと販促の仕事の7割がたは絶えずそれにさらされてますよね。
丸山:
今の人たちはもっと冷静じゃない、そういうことに。冷静だからまたお金の使い方やなんか乱暴すぎることになっちゃってるところ
あるけどね。
聞き手:
白川さん、当時のアルバムの製作費ってどうだったんですか?
丸山:
高かったんだ。
白川:
う〜んとねえ、いくらだったかなあ、よく覚えてない。けど普通の人の1.5倍ぐらいはかけてたような気がする。で、何でかかる
かというと、やっぱり歌入れすっごい時間かけてたのよ。うた命だから、と思って。アレンジはずっと萩田光雄君って初期の頃ずっと
やってくれてたんで、優秀なアレンジャーだった。そらそれで順調だったんだけど、歌入れかかるのよ。そんな喉強い方じゃないから
ね。それとやっぱり忙しいじゃない。だから調子のいい時と悪い時と色々あって。
藤岡:
そうだね。全部のメディアやってたもん。フォークならフォークの連中がさ、コンサートやってたらいいじゃん、あとレコーディング。
アイドルはアイドルでさ、テレビ出ればいいじゃん。両方やってて、それでアルバム2枚だろ、オリジナルを。そら凄かったよ。
それでまた、なかなか納得してくれないの。俺ばっかり言ってさ、あっ今のいいじゃないと思ったらさ、もう1回(笑)。何回も泣き
出してたよ、本人が。
聞き手:
肝のポイントは、多分曲によって違う?
白川:
いやいや、ワンポイントですよね。古いポイントだけど、ずっと。太田裕美にも言われたんですけど、演歌の竜ですよ。感じるか
感じないかだけだから。だから音程はほら、本人の方が僕より確かなんで、僕が歌うとね、いつも嫌がってたから。「白川さんが
歌うと私の音程狂う!」って言われてたから。だけど、やっぱりね。歌は感じないとつまんないのがって、そこの納得のポイント
だけ。
藤岡:
あのこだわりがやっぱり、あれはまたすごい大事な要素だったんだろうね。
聞き手:
「木綿のハンカチーフ」はほんとに楽曲の構想から始まって、出口までドンと持っていかれたんですけど、セプテンバーレインの
声が高いところでこう...
丸山:
消えちゃうからなあ。
聞き手:
もうギュッとあの消える消えないのギュッというところの、実はあれが好きであのシングルをまだその頃レコード会社のスタッフ
じゃなかったんですけど買ってるんですよ。で、ただテレビに出るとことごとくあそこの声が...
藤岡:
出ないね。
聞き手:
なんか、すごく辛い気持ちでテレビ見て。
丸山:
そうだね。だからもう、あの年あれがセプテンバーレイン、レインだから9月ぐらいだっけ。それで11月に紅白歌合戦になる
っていう話になって。紅白歌合戦欠場、しばらく太田裕美は休養すべきだって過激な意見を俺は持ってて、それ持って渡辺プロ
だったら紅白歌合戦出さないわけにいかないっていうんで、大ゲンカになった。俺、ケンカしたのはあの時だけだもん。
藤岡:
だったねえ、あん時は。
丸山:
もうそれでさ、俺すごい正しいこと言ってるわけ。
藤岡:
キャンセルすることの怖さね、すべてを。
丸山:
そんなのキャンセルしろ、みたいな。おまえはもう潰す気かみたいな。それで言いあげて、もう夜中。六本木にジェミニって
飲み屋があるんだけど未だに覚えてるもん。ジェミニで俺はもう大ゲンカして泣かしちゃったもん。藤岡さん泣かしちゃった。
藤岡:
あれは詰まったよねえ。
聞き手:
やっぱり、それは...
藤岡:
真っ黒だもんスケジュール。
丸山:
おまえこんなの歌ってて、何の意味がある。声が出てねえんだからって、あの高いところが出ないじゃない。だからそれはもう
全部スケジュールキャンセルしろって、もう滅茶苦茶言ったよ俺も。
聞き手:
藤岡さんとしたら正論は正論だけどそうはいかないんだ...
藤岡:
いや、もう色んな人の顔が浮かんで、キャンセルするのおうおうおうみたいな...
聞き手:
それはテレビ局から...
藤岡:
ああ、もう全部全部。
丸山:
急に正しいこと言い出したのかね、俺も(笑)。
藤岡:
あれででも整理するところはしたんだよね。もうこれ断っても大丈夫そうとか。
丸山:
かなり整理したけどでも最後。
藤岡:
でもやっぱり基本的にね、スポンと休ましてさ、診断書書いてスポンと休ませるのがいちばん喉のためにはいいんだろうけどさ、
なかなか決断できなかったね、実際問題。
聞き手:
あの、もっと話を伺って、たぶんこの2倍3倍ぐらい伺ってみたい気がしてるんですけど、時間も時間で一回お開きにさせて
いただきたく、それぞれ皆さんにとって太田裕美さんをやっていた時代、年月とかあるいは存在とか、そこでやった自分の仕事の
キャリアって何でしたか?っていうのをそれぞれに伺って〆にしてしまいたいのですけど。藤岡さん。
藤岡:
難しいなあ。まあでも、素材も太田裕美も含めてね、今までのスタッフも含めて、やっぱり俺は俺なりのやり方しかできないから
今でも思うけど、今後もねやっぱり人とのつきあいを俺は大事にしていこうっていうのが、今も昔も今からも、それだけだなあ。
聞き手:
白川さん。
白川:
なんかね、太田裕美さんってすごく不思議な人だなって思うんですよ、いつも。すごく彼女自身に歌う能力とかピアノ弾く能力は
ものすごい卓越的にあるわけじゃないんだけど、ここにいる3人も含めてね、松本隆、萩田君もひっくるめて、あるいは初代の
バンマスの中島君も含めて、彼女のまわりにいる人ってね、すばらしくねえ、何か彼女から恩恵を受けてるんじゃないかなあって
思ってて。たぶんこの3人はとっくにたくさん恩恵を受けてんですけど。何かそれをキュッと、例えばね今さっきずっと喋ってた
藤岡がえらいがんばって仕事してても本人がブーたれるなんてことは、まずやっぱうんとないですよ。そりゃ能力的に声が出ない
とかね、そういうことは肉体的なことはしょうがないんだけど、嫌な顔とか割としない、すごく一生懸命でどこ行っても嫌がられ
ない、だから何かそういう人徳みたいなもんがね、色んな人をこう何ていうの、みんなまわりの人がね、ほんと偉い人ばっかしに
なっちゃった、僕を除いては(笑)。たいへんなことだと思うよ。もう、ヒップランドの松田君にしてもそうだし、今あそこやってる
関根何だっけ、みんなマネージャーで社長になってる。中島君なんてビーイングの○△だよね。彼は太田裕美の初代バンマスだよ。
藤岡:
バンマスギタリストだった。
白川:
でも筆頭は丸山さんですから、丸山さんじゃあどうぞ。僕はそんな印象が。
丸山:
あのね、僕がやっぱり印象的なのは、あるところに行って、割とひとつの流れを完成させてある時代を行った時に、こっから先
どういうふうにするかっていった時にさらっとニューヨークに行っちゃったよね。ニューヨークに行って戻ってきて、ニューヨーク
でちょっとこういうふうにやってみたいっていった時に、今亭主になってる福岡君に制作がチェンジしました。で、そこんところで
さらさらっと結婚しちゃって、しばらく引退するかと思ったら、そういう大げさなこと一切無しにきれいにっていうかな、だからね
一旦消えるじゃない。消えるっていうか、つまり何にも言わない。こう、静かに家庭で子育てやって。それでまたここんところまた
ふわっと、また出てきましたとも言わないで、また自然にやってるじゃない。あのね、何てのかな、時代のつかみ方がすごく本人が
わかってるよね。だから、今の時代は私は頑張んなきゃいけない時で、今頑張ってもしょうがない時には、その時にはすっと、
ちょっと一歩下がる。で、またスタンス変えて、こういう時代だったら私はこういうスタンスで出てもいいじゃないっていう。
何てのかな、その部分というのを、時代をちゃんと読むことができる人だよね。僕らはね、すごくさっき言ったようにB級スタッフ
が、もしかしたらものすごい能力ある人をやってるんじゃないんだけど、時代のつかみ方っていうのはもしかしたらね、彼女は
超A級だよね。だからその、会社もあるじゃない。ものすごくうまくいってる時、で、そのコンセプトでうまくいってる時はそれ
でいいんだけど、時代が変わったらコンセプト変えなきゃいけないわな。もうねそういうのを全部わかってる人だなっていうのが
あってね。ここんとこ時々彼女と会って話やなんかしたりした時、それを理屈こねてあーだこーだ言うわけじゃなくて、それを実現
してるじゃない。ここんとこにきて、この人はずいぶん研究すると勉強するに足る、研究するに足る人だなって思いだしたね。
なんだ結局、俺たちはB級のまんまだったかもしんないけど、この子A級だったかなってね。存在がね、うん。
聞き手:
そこまできっと重なるところがあると思うんですけど、何か女の人にはかなわないな。女の人の場合ってほんとにこう芯の...
丸山:
しかしだけどねえ、こんなに、さっき白川さんが言ったようにね、嫌な顔を見せたことのない、本人の自我を我々に見せなかった
タレントさんていうのは、私はあとにも先にもこの人だけだもんね。
藤岡:
マネジメントは苦労したこと無いからな。
白川:
兄弟喧嘩はしてたけどね(笑)。兄弟みたいなもんだよ。
藤岡:
それはあったね。
聞き手:
スタッフが仕事すると仕事をしただけ全部太田裕美が自分の翼の中でばぁっと大きくなっていける...
藤岡:
大きくなるかならないかは...とりあえず飛んでるよな。飛んではくれるよ。
丸山:
まあ本人見てもさ、これね、役に立たないけど藤岡さんが友達関係で持ってきたしょうもない仕事だってのがもう見え見えの仕事が
いくらでもあるわけじゃない。それだってさ、絶対文句言わないもんね。そういう分じゃ、やっぱり素晴らしい女性ですよ。
聞き手:
何か邪馬台国をまとめた巫女さん(笑)。
丸山:
そんなおどろおどろしいいところは無いからな。無いのがいいよね。まあ、でもあと付け加えだよね。もう、ここんちの家族は
素晴らしいよね。
聞き手:
なんか年に1回...
丸山:
まだ相変わらずね、やってるけどね。
藤岡:
あのファミリーで育まれたフィーリングだね。
丸山:
フィーリングだね。むちゃくちゃいい家族だし。乱暴なオヤジなんだけどね。
聞き手:
でも未だにそのつながりが毎年毎年4月ですか、行われるっていうのが何ともあったかく、でもすごいなと思います。
白川:
そうだよね。
藤岡:
今、裕美のイベントなんか自分たちでやる場合でも結構集まる奴みな集まってくるからね、前のマネージャーもね。
聞き手:
そういう時ってやっぱりあの、久々に会う意味にも、集まるとそのまま昔の口調で...
丸山:
もう全然いっしょ。昔のまんま。
聞き手:
結構そういう1か所が1年のうち、その時間があるってのは気持ちいいですね。
白川:
うん。
丸山:
うん、気持ちいい。もう夕方から飲み始めて7時頃にお開きにするってしたいんだけど、その時には酔っ払いあげてるからね(笑)。
全員ベロベロ。
藤岡:
昔に比べりゃ弱くなったよね。
丸山:
そう。
藤岡:
ねえ、へっちゃらだったけどね。バーボン1本や2本ね。
聞き手:
うちのアーティストに関わる人間が、そういう場所を長く持ってられるといいですね。一人ひとり。なんか、パーンと盛り上がって
終わるって感じにならなくて申し訳ありませんでした(笑)。
丸山:
しみじみとするのよ。
藤岡:
裕美ってそういう子だよ。
丸山:
思い出すとね。まあだから、この仕事してる時の最初の担当がこういう人だったていうのが多分僕は音楽業界をあんまり嫌いになん
ないで未だにやってる最大の理由かもしれないね。
聞き手:
彼女もまだやっているっていうところがやっぱり...
丸山:
いいよね。
藤岡:
いいよね。
聞き手:
今日はありがとうございました。
丸山:
どうも。
藤岡:
どうもどうも。
白川:
どうも。
( E N D )
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