パイオニア・サウンドアプローチ (1976年)
1976年の春に放送されたこの番組は、裕美さんの可愛い声と曲の良さ、トークから伝わってくる真摯な人柄に魅かれて、その後
私が裕美さんにのめり込むきっかけになった番組です。この時点ではもちろんドデカヘドロンの時のようなガラッパチさは微塵も
感じさせませんが、もしこの番組が無かったら、当HPはたぶん今頃存在してなかったと思います。

その1

聞き手:加瀬邦彦氏

(スタジオ演奏 雨だれ)

聞き手:
一週間のご無沙汰です。あたくし司会の加瀬邦彦です。てな感じで、今日はすごく若い美しい女性、この番組でいちばん今まで出た
中で若いんじゃないかと思うんですけどね。今日はスタッフがどういうわけか僕を危険と感じたのか彼女と僕との間をガラスで仕切り
ましてね、太田裕美さんは部屋の個室にピアノと一緒に入ってて、僕はガラスのこっちの外にいて、すごい距離が離れててしゃべり
にくいんですけど。どうもこんにちは。

太田:どうも。よろしくお願いします。

聞き手:この今やってくれた「雨だれ」っていう曲はこれはデビュー曲?

太田:
そうです。デビュー曲です。

聞き手:
どのくらい前?

太田:
もう、1年4ヶ月ちょっと経ちました。

聞き手:
そんな経ちましたかね。

太田:
はい。

聞き手:
デビューする時、僕ちょっと見かけたんですけどね。渡辺プロで。

太田:
私はよく見かけております(笑)。

聞き手:
あっ、そうでしたか。あの、最初どういう感じのうた歌うのかなと思ったら、この「雨だれ」とっても感じが合ってて、よかったなと
思いましたけどね。

太田:
はい。

聞き手:
どうですか、自分でこう振り返ってみて。1年4ヶ月。

太田:
やっぱり、あのそうですね、あたしはとっても今まで1年4ヶ月ずっと、すごくいい曲に巡り合えたと思いますね。

聞き手:
そうですか。ほんとにいいですよね曲。それで自分で昔からピアノはやってたわけですか?

太田:
はい、小学校3年からやってたんですけど、でもクラシックだったんです、ずうっと高校卒業するまで。だから初めてデビューする
年に9か月ぐらいピアノの弾き語りして歌ってたんですけどね。その時初めてピアノの弾き語りをするときに、すごくクラシックで
勉強しすぎたことをとても悔みました。

聞き手:
そう。でも小さい頃はね、ピアニストとして将来やりたいなと思ってたわけ? 歌になったきっかけってどういう?

太田:
あの、学校がね、音楽学校を受ける時にほんとはピアノ科で受けるつもりだったんですけど、ちょっと程度がまだそこまでいかなかった
んで、ちょっと入ってからがキツイんではないかっていうことになって、入ってからピアノで苦しむより、今のうち声楽で入っちゃって
後から一生懸命練習してピアノ科に移れば、って感じで。で最初は安全な方で歌で受けたんです。

聞き手:
はあ、しっかりしてますねえ、なかなか考えが(笑)。

太田:
いや、私じゃないんで。それはね、ピアノの先生がそう決めてくださったんですね。

聞き手:
作曲なんかは自分でするんでしょ?やっぱり。

太田:
そうですね、少しずつですけどやってます。

聞き手:
今まで随分しました?

太田:
いえ、まだそんなに。えっと30曲ぐらいですけどね。実際に私が歌って公表できるのは、まだ4、5曲しかないんです。あとはね、
全部埋もれてるというか、すごく愚作というか何というか、そんなのが多くて。はい。

聞き手:
じゃ、今日はさっそくその自分で作曲した曲でピアノで。ピアノとギターが加わってね。

太田:
はい、そうです。

聞き手:
それでは聴かせてください。曲名は何でしょうか?

太田:
「グレー&ブルー」。

聞き手:
はい、お願いします。

(スタジオ演奏 グレー&ブルー)

聞き手:
今日のパイオニア・サウンドアプローチは、とても可愛らしくて、とてもポップな音楽を作るシンガーソングライター、太田裕美ちゃんを
迎えてお送りしておりますが。小さい頃っていうか、物心ついた頃、色んな音楽聴いたでしょ。

太田:
聴いてましたね。

聞き手:
どんなのを聴いてました?

太田:
あの〜色々。都はるみさんとかね、美空ひばりさんとか、あとは坂本九さんとか森山加代子さんとかね、色んなの何かごちゃ混ぜに耳の
中に入ってきました。

聞き手:
あっそ。外国の曲なんかはあんまり聴かなかったの。

太田:
は、聴かなかったですね。

聞き手:
聴かなかった。ビートルズなんか入った頃は?

太田:
あのね、ちょうど私が小学校5年生ぐらいだったんですね。ビートルズって名前のグループがいて、でその中に可愛いポール・マッカー
トニーていう男の子がいて、そのぐらいしか知らなかったですね。あとは、ジョージとかジョンとか名前ぐらいしか。

聞き手:
あんまり音楽...

太田:
音楽的にどうのこうのじゃなくて。

聞き手:
興味はなかった。音楽的には、あっそう。何か今の裕美ちゃん見てるとね、そういうポップ的なものが好きだったのかなと思ってたけど。
太田:
それは大きくなって、ていうかね、高校ぐらいからですね。日本のより向こうの方が好きっていうのは。

聞き手:
じゃ、都はるみさんの歌とかそういうの歌ってたわけ?

太田:
そうですね、いっつも。はい。

聞き手:
別に音楽はこういうのが好きだとか、そういう別にジャンル分けして、これしか聴かないとかそういうことはなかったわけだ。

太田:
そうですね、はい。

聞き手:
やっぱり若い頃のそういう自分の受けた影響っていうのはね、すごく大きくなってからもどんどん出てくると思うのね。

太田:
そうでうね。

聞き手:
だけど今みたいに話聞いて、幅広くね、色んなものを聴いたってことはいいことだと思うんだ。今にそういうのが出てきて、都はるみ節
みたいなんで歌うかもわかんないけどね(笑)。作詞なんかはしないんですか?

太田:
作詞もしてます。

聞き手:
あ、そう。いつも曲作る時、詞と曲とどっちが先に?

太田:
前は一緒だったんです、同時に。同時に出てきたんですけどね、最近は、あっ、ちょっと前は詞が先行の曲だったんですね。最近は曲が
できて詞ができるっていう感じです。

聞き手:
曲ができて詞があとからっていう、僕なんかもそういうのが多いんだけどね。サウンド志向にっていうかね、案外自分で最初こういう
感じの曲を作りたいなとか、サウンドとかそういうのは頭に?

太田:
そういうんでもないんですよね。あたしの場合はね、さっきもちょっと「袋小路」の前にしゃべったけど、言葉が詰まっちゃうんです。
だから曲を先に作っちゃって、そのあとに詞をね、言葉を探し出すというか、そういう作業をしないと詞がなかなか作れないんですね。

聞き手:
あ、そう。どっちの、曲作る方がやっぱりやさしいてことかな?

太田:
う〜ん、どうかな。やさしくはないですけどね。

聞き手:
やさしくはない、あ、そう。今度の曲「ひぐらし」ですか。これも自分で?

太田:
いえ、これはユーミンの曲です。

聞き手:
あ、そうですか。それではそれを歌ってください、お願いします。

(スタジオ演奏 ひぐらし)


サウンドアプローチ その2へ